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腫瘍内微小環境を標的とした治療薬の開発

 

がんの組織に形成される特徴的な環境(腫瘍内微小環境)が、新たな治療標的として注目されている。例えば、ヒト固形腫瘍には、細胞増殖と血管新生の不均衡に起因する”低酸素環境”が存在する(右図)。低酸素環境に適応したがん細胞は、放射線や多くの抗がん剤に感受性が低く、治療効果不良の主因であるばかりでなく、浸潤・転移・再発の温床となっており、難治性癌の悪性化の原因として注目されている (Adv Drug Deliv Rev 2009, 61, 623)。我々は、低酸素下で安定化し、細胞障害性を発揮する融合タンパク質製剤 (TOP3, POP33)を開発し、低酸素がん細胞を標的治療可能であることを示してきた (Cancer Res 2002, 62, 2013, Clin Cancer Res 2009, 15, 3433, Can Sci 2016, 107. 1151)。現在、膵臓癌治療への臨床応用を目指して、他の抗がん剤との併用プロトコル(combination therapy)や製剤調整の最適化をおこなっている。

関連研究費: JST京都市地域結集型共同研究事業 (H16-H21)、新学術領域[微小環境] (H22-H26)、文部科学省次世代がん研究シーズ戦略的教育ブログラム (H23-H27), AMED 革新的がん医療実用化研究実用化研究事業 (H27-H29)

抗体医薬に匹敵する中分子医薬のデザイン技術の確立

 

治療標的に結合する抗体を利用した医薬(抗体医薬)は従来の低分子薬剤と比べて副作用が少なく、低分子薬剤をしのぐ治療成績をあげるものもあり、薬剤として有望視されている。しかし、抗体は分子量が大きく複雑な構造を持つため安価な化学合成による大量生産が難しく、製剤費が高いため治療費が年間数百万円にも達することが問題になっている。さらに、組織浸透性が低いことや細胞内への送達が難しいために、適応疾患が限られてしまうことも課題となっている。
そこで我々は、化学合成で安価に調整できる小型タンパク質やペプチドを抗体医薬の代替として利用するために、中分子医薬のデザイン技術の確立を進めている。これまでに、ゆらぎを抑制して構造を固定することで標的結合ペプチドの結合力が飛躍的に高まることを発見し(PLoS One 2014, 9(8), e103397)、このようなゆらぎ抑制ペプチドのスクリーニング技術を開発してきた(特願2013-090524, PCT/JP2014/061366)。現在は、医薬品として有望な抗体代替中分子の創出プラットフォームの構築、中分子医薬デザイン技術の高度化と汎用化、新しい中分子医薬フォーマットの分子設計を行っている。

関連研究費: 東京工業大学ソリューション研究企画プロジェクト (H25)、東京工業大学若手異分野融合研究支援 (H26)、第一三共株式会社創薬プロジェクト (H26-H27)、東京工業大学ソリューション研究企画プロジェクト (H27)、武田科学振興財団医学系研究奨励 (H27-H29)、科研費挑戦的萌芽研究 (H28-29)、武田薬品工業株式会社 COCKPI-T (H29-H30)、稲盛財団研究助成 (H30-H31)、AMED 橋渡し研究加速ネットワークプログラム (慶應拠点) (H30)、AMED 創薬基盤推進研究事業 創薬デザイン技術開発研究 (H30-H31)

機能性ペプチドを利用したドラッグデリバリーシステムの開発

 

がん組織で治療薬が効果を発揮するためには、これらを適切に患部に送達するシステム(ドラッグデリバリーシステム、DDS)が必要である。がん組織では正常組織に比べ血管の透過性が著しく亢進し、特定のサイズを持った化合物は血管から流出しやすくなる現象(EPR効果)が良く知られている。しかし、内圧の高いがん組織や正常血管近くに存在するがん細胞にはEPR効果は期待できないことから、新しいDDSの開発が望まれている。そこで我々は、腫瘍血管に作用する機能性ペプチドに注目し新たなDDSの構築を進めている。これまでに、細胞膜透過性を持つペプチド(CPP/PTD)が血管透過性を制御する受容体NRP1に結合し、血管透過を促進する作用を持つことを見いだしている(J Control Release 2015, 201, 14-21)。現在はより効率よく薬剤を送達するために、CPP/PTDペプチドの最適化を進めている。

関連研究費: 新学術領域[微小環境] (H22-H26)、若手研究B (H22-H24)

がん微小環境を可視化する光イメージングツールの開発

 

近年の研究から、腫瘍組織に特徴的な微小環境要因が、がん悪性化機構に深く関与していることが明らかになりつつある。がん悪性化機構とがん微小環境要因の関わりを明らかにすることができれば、新たながん治療・診断標的として有望である。しかし、腫瘍組織の微小環境は時事刻々と変化しており、従来の解析手法によって、微小環境によるがんの悪性化制御機構を精度よく解析するのは困難であった。そこで、我々は、がん微小環境と悪性化機構の関わりを非侵襲的かつ高感度に可視化するイメージングシステムを開発し、がん悪性化機構について新たな知見を得ることを目指してきた (PLoS ONE 2010, 5, e15736, PLoS ONE 2011, 6, e26640, Nat Commun 2016, 7, 11856, Sci Rep 2016, 6, 34331)。現在は、発光センサーや複数のルシフェラーゼを組みあわせることで、より高感度・高分解能かつ多角的に腫瘍内微小環境の動的な変化を捉えることができる発光イメージングシステムの開発を進めている。

関連研究費: 特定領域研究[がん特] (H18-H21)、基盤研究A (H21-H27)、研究成果最適展開支援プログラム A-STEP (ハイリスク挑戦タイプ) (H26-H28)、新学術領域研究 (レゾナンスバイオ) (H28-H29)

がん転移を制御する新規分子機構の解明

 

がんの転移は多くのがん患者において、深刻な予後不良の原因となるが、未だ効果的な治療法は存在しない。がんの転移を決定的に制御するメカニズムの理解は、患者の予後を改善し、将来のがんの撲滅に必須である。がんの転移は、血中へのがん細胞の漏出に始まり、遠隔臓器への侵入、微小転移巣の形成などを含む非常に複雑で多段階の過程によって構成されており、そのメカニズムを理解するには、がん細胞の遺伝的特性だけでなく、転移過程における間質組織との相互作用も明らかにしなければならない。そこで、我々は、従来の生物学的な解析手法に加え、非侵襲イメージング、ユニークな転移モデルや遺伝子の大規模解析を組みあわせて、がんの転移を制御するメカニズムの解明を目指している (Cancer Sci 2014, 105, 553)。特に、骨肉腫の肺転移や前立腺癌の骨転移を制御する新たなメカニズムの理解を目指して活発な研究を進めている。

関連研究費: (公財)三菱財団研究助成 (H24), 若手研究B (H27-H28), 若手研究A (H29-H31)

共同研究

 

我々はがん研究における学際的アプローチを開拓するために、以下の学内・学外問わず多くのグループと共同研究をおこなっている。国立癌センター東病院、東工大・櫻井研究室、東工大・上野研究室、東工大・小俣研究室、大阪府立成人病センター・井上研究室、京都産業大学・瀬尾研究室、東北大学・佐藤研究室、電気通信大学・牧研究室、メディギア・インターナショナル株式会社